お知らせ

【開催報告】 慶應×河北 合同レジデントデイ

お知らせ


2025年5月、慶應義塾大学病院総合診療科と河北ファミリークリニック南阿佐ヶ谷の合同レジデントデイが開催されました。両院の専攻医がポートフォリオを発表し、活発なディスカッションとアドバイスが行われました。

●ポートフォリオ発表1:家族の感情に向き合うケア

ある終末期患者の退院支援をめぐり、家族間の感情的な葛藤が浮き彫りとなったケースが紹介されました。患者は自宅退院を望む一方で、家族は過去の関係性や介護への不安から施設入所を希望。医師が家族カンファレンスの場を設けたことで、家族それぞれの感情が言語化され、最終的に全員の納得のもと在宅療養が選択されました。

発表後の議論では、「医師が感情の爆発にどう向き合うか」「共依存や世代間連鎖をどう捉えるか」といった視点からの振り返りがあり、家庭医療における家族志向型ケアの奥深さが再認識されました。

●ポートフォリオ発表2:意思決定を支える対話

心停止時の対応方針をめぐって家族内で意見の対立があった症例を紹介。本人が延命を望まない意思を明確に表明した一方で、長年寄り添ってきた家族は「少しでも長く生きてほしい」との思いから延命処置を希望。医師は家族との関係性を丁寧に分析し、カンファレンスでは対話を重ねながら相互理解を促進しました。

議論では、患者の自己決定と家族の想いのバランス、医療者の介入のあり方について、多角的な視点から意見が交わされました。

●ポートフォリオ発表3:診断がつかないときの寄り添い

体調不良を訴えて受診した働き盛りの男性の症例。明確な診断はつかなかったものの、医師は「重大な疾患は否定的である」ことを丁寧に説明し、患者と不確実性を共有しながら診療を進めました。

「検査をどこまで行うか」「わからないまま経過を見る際にどう信頼関係を築くか」など、未診断の健康問題(MUS: Medically Unexplained Symptoms)への対応に関する学びが共有されました。


合同レジデントを終えて

それぞれの発表からは、単なる疾患の診断や治療にとどまらず、「患者と家族の思い」「不確実性との向き合い方」といった、医療の本質に迫る実践が語られました。若手医師の視点から見えてきた現場のリアルと、その先にあるケアのあり方が浮き彫りとなる、有意義な時間となりました。

当科の専門研修プログラムでは2ヶ月に1回レジデントデイを開催して、専攻医が経験した事例に基づき総合診療・家庭医療の切り口で学びを深めています。

また、河北ファミリークリニック南阿佐ヶ谷とは定期的な合同カンファレンスを開催して交流を深めています。

興味がある方はぜひ見学に起こしください。

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河北ファミリークリニック南阿佐ヶ谷